自分の性別がわからない、そもそも性別という概念って何?
そう感じている人もいると思います。
十九歳の里帆が自分の性別を模索するおはなし、『ハコブネ』を紹介します。
価格:528円 |
こんな人におすすめ!
- 自分の性別に違和感がある
- 生き方の多様性を知りたい
- 自分は地球の一部だと考える
内容紹介
セックスが辛く、もしかしたら自分は男なのではと思い、男装をするフリーターの里帆。そんな曖昧な里帆を責める椿は、暗闇でも日焼け止めを欠かさず肉体を丁寧にケアする。二人の感覚すら共有できない知佳子は、生身の男性と寝ても人間としての肉体感覚が持てないでいた-。十九歳の里帆と二人の"アラサー"女性。三人が乗る「ハコブネ」は、セクシャリティーという海を漂流する。
印象に残った文章
男性は表情の変化も仕草と同じように穏やかだった。微笑むときも、ぱっと笑うのではなく、唇と頬がゆっくりと変化して微笑みの形になっていく。綺麗なグラデーションを見ているようで、知佳子は目を奪われた。
単行本P77
少しだけ茶色がかった黒目は、知佳子のように好奇心に任せて動き回ったりせず、月のように静かに目の中に留まって、湯のみの中を見つめていた。時折その視線を遮断する、睫毛がなびくようなゆっくりとしたまばたきは、すすきの原っぱを思い起こさせた。男性の睫毛はとても丁寧に世界を撫でていた。
単行本P77
◎アラサー女性として登場する知佳子が、親しくなった男性とお茶をするシーンです。男性の丁寧で穏やかな人柄がよくわかる綺麗な描写だと思いました。
価格:528円 |
著者プロフィール
村田沙耶香(むらた・さやか)
1979年、千葉県生まれ。玉川大学文学部芸術文化学科卒業。2003年「授乳」で第46回群像新人文学賞受賞(小説部門・優秀作)。2009年「ギンイロノウタ」で第31回野間文芸新人賞、同作品で第22回三島由紀夫賞候補。2010年『星が吸う水』で第23回三島由紀夫賞候補。著書に『授乳』『マウス』『ギンイロノウタ』『星が吸う水』がある。
※表紙カバーより