終わりのない冬、誰も予想しなかった異常気象。まるでコロナ禍のような先の見えない世界。
雪が降り続ける日常で恋をするふたりの高校生が、人生での選択や死にも向き合うおはなし、『冬にそむく』を紹介します。
こんな人におすすめ!
- 青春小説を読みたい!
- 学生時代をコロナ禍で過ごした
- 雪の降る地域に住んでいる
内容紹介
世界はすっかり変わってしまった。気温のあがらない夏、九月に降る雪。このまま「冬」がいつまでも続くのだと、人々は日に日に絶望を深めていく。神奈川県の出海町にある海水浴場も一面雪で覆われ、サーファーも釣り客も姿を消した。この町で育った高校生、天城幸久は同級生の真瀬美波と付き合っている。だが、クラスメイトたちはそのことを知らない。高校からこの町へ引っ越してきた美波は前面が総ガラス張りの寒々とした別荘にひとりで住んでいる。幸久は雪かきスコップを手に彼女の家へと通い、密かにデートを重ねていく。
印象に残った文章
華やかな顔立ちに濃い睫毛が不思議な翳を落としている。彼女がすこし唇をとがらせ、マグカップに口をつける。幸久はその唇の柔らかさを知っている。それだけで世界の謎がすべて解ける気がした。
彼女はうつくしい。誰が見てもそうだ。きっと彼女自身もわかっている。それが幸久にはまぶしかった。
◎どちらの文章も、幸久が彼女のことを見つめ、愛情が感じられるシーンです。先の見えない不安な状況においても、彼女と緒に過ごすことが幸久の心の落ち着きにつながっていることがわかります。
自分にできることを相手に差し出し、できないことを相手に補ってもらうというやりとりに上も下もない。
著者プロフィール
syo5(しょうご)
1995年生まれ、東京藝術大学在学中にデビュー。『余命3000文字』『夢探偵フロイト』シリーズをはじめとした書籍の装画に加え、代表作『微睡みのヴェヴァラ』などアニメーション制作も手がける。
~表紙カバーより~